航空部とは

東大航空部について

東京大学運動会航空部は主にグライダーを飛ばして空を楽しむという活動を行っています。よく鳥人間と勘違いされますが、鳥人間とは全く関係ありません。楽しみ方は人それぞれですが、この楽しみというのは実際に乗ってみないとわからないものです。4月には体験搭乗会をやるので興味がある方はもちろん、どんなものかよくわからないけど…という方も是非参加してみてください。

グライダーというのは飛ばすための準備や片付けに時間・人手・指定された場所を要するので、急に飛びたくなったからといってみんなで集まって「さあ飛ぼう」というわけにはいきません。だから普段の活動は、基本的には週に1回程度駒場で行うミーティング以外ありません。年10回程度、2日から1週間程度の合宿を行いそこで訓練を行います。

東大航空部が目指すものはもちろん大会優勝もありますが、それ以上に全員の技術向上です。だから選手の搭乗回数が多く1年生は下働きであまり飛ばしてもらえない、なんて事はありません。入部したらわかると思いますが、むしろ1年生は優先して飛ばしてもらえます。これは、たくさん飛ぶことで早く上達してほしいと思っているからなんです。

グライダーに乗る者にとっての一番の目標はなんといっても「ライセンス」でしょう。普段私たちは訓練をするときに、自動車の仮免許のような「航空機操縦練習許可書」というものを持っています。これは航空身体検査を受ければ誰でも取れるもので、視力の制限もそこまで厳しくありません。この練習許可書で単独飛行も可能ですが、教官(インストラクター)がいないと飛ぶことができないし、大会にも参加できません。ライセンスというのは、決められた時間数・回数飛んだ上で学科試験を受けた後、指定養成合宿と呼ばれる合宿に参加するか、または国土交通省航空局の試験官と一緒に飛んで試験を受ければ、取得することができます。ライセンスの取得は簡単ではありませんが、その分取れたときの達成感は忘れられないものになるでしょう。ライセンスが取れれば大会にも参加できます。

グライダーとは

グライダーとは飛行機からエンジンを取り除いたようなもので、航空法に定められた立派な航空機です。その点でハンググライダーやパラグライダーとは異なります。むしろ、ジャンボジェット機やヘリコプターの仲間といえるでしょう。よくグライダーといえばハンググライダーを想像する人がいますが形も全然違います。主にドイツやポーランドなどで生産されています。例えばASK21はAlexander Schleicher社(ドイツ)製です。機体は500万から1000万円以上で非常に高価なものです。

エンジンが付いていないので滑空中は風の音しか聞こえてきません。地上にいても上空を飛ぶ滑空機の風切り音が聞こえてきます。計器板には速度計、高度計、昇降計などが付いていますが、ジャンボ機のようなハイテクなものは付いていません。ですから基本的に有視界飛行です。だからグライダーで飛ぶ時には、地平線と風の音が重要になってきます。風の音を聞いたり地平線の流れる早さを見て速度を知り、地平線の高さで機首の上下を知るのです。

上空では風に対して時速100km近くで滑空し、上手く上昇気流に乗ると高度1000m以上に達することもあります。グライダーにはエンジンがないので、その高度は次第に下がってきます。しかし上昇気流を見つけて上手く飛べば、高度を維持もしくはそれ以上に上がれるため数十分から数時間飛び続けることが可能です。ただ、複座機であまり長く飛びすぎると他の部員のひんしゅくを買ったり、降りてくるよう指示されたりすることもあります。

外見は説明するよりも見た方が早いと思うので、下に写真を掲載しておきます。写真は最初に乗るであろう複座機ASK21です。ASK21の写真

グライダーの飛ばし方

ランウェイの端にはウインチがあり、反対の端近くにはピストが設置されます。ウインチからピストの方へワイヤー(曳航索)が引かれ、ピスト側の端にグライダーをつないで飛ばします。着陸の時は場周経路と呼ばれる四角い経路を飛びます。

グライダーはエンジンを持たないため、自力の離陸は不可能です。飛ばし方には主にウインチ曳航と航空機曳航があります。東大航空部ではふだんウインチ曳航を行っています。まず、離陸の準備から。機体をピスト(管制)横にセットします。操縦系統点検・計器点検の後、搭乗者の搭乗が完了すると、機体と曳航索をつなぎます。これでいつでも離陸可能です。機長がOKサインを出すと「翼端」の人は主翼の端っこを持ち上げ、機体を水平にします。グライダーのギア(車輪)は自転車みたいな縦配置になっているのでどちらかの主翼が必ず地面に付いてしまいます。だから「翼端」といって片方の主翼の端っこを持つ人が移動や離陸の際には必要です。機体が水平になったら準備よしです。ウインチ曳航の場合、ピストがウインチに準備が完了したことを無線で伝え離陸開始です。

発航時の写真
↑準備よし!!
ピストの写真
↑ピスト

ウインチ曳航はウインチと機体を約1kmほどの曳航索(金属のワイヤー)で結び、その曳航索をウインチが高速で巻き上げることによって、凧揚げの要領で高度400~500mまで引き上げられます。一気に加速するので地上滑走距離はわずか10mほどです。思ったよりも急上昇なので慣れるまでは少しこわいかもしれませんが、ほとんどの人は数回飛ぶうちに慣れるので大丈夫です。

4連ウインチの写真
↑4連ウインチ
ウインチ曳航中のグライダーの写真
↑ウインチ曳航中

航空機曳航というのは曳航機と呼ばれるプロペラ機とグライダーを数十mの曳航索(ロープ)でつなぎ、曳航機が十分な高度まで引っ張り上げるというものです。ウインチ曳航と違って緩やかに上昇していきます。航空機曳航のメリットとして、ウインチ曳航よりも高くまで上げてもらえる、サーマル(上昇気流)の中まで引っ張ってもらえるなどがありますが、費用が高いのが欠点です。

航空機曳航の写真
↑航空機曳航(前が曳航機)

着陸する際には決められたチェックポイントを通過し、ピスト(管制)に無線を入れます。無線を入れるとピストから着陸するR/W(=滑走路、ランウェイと読む)の指示が出ます。R/Wの指示を受けたパイロットはベースターン、ファイナルターンを行ってR/Wを正面に見て、ファイナルアプローチに入ります。自分が着陸するR/Wに軸線を合わせながら徐々に高度を落としていきます。ジェット機のように機首の上げ下げで速度の調整、スロットルで高度の調整・・・といきたいところですが、グライダーにはエンジンがありません。ですから飛んでいる間は常に機首の上げ下げによって速度を調整します。高度の方はといいますと、ダイブブレーキと呼ばれるもので調整します。調整といっても高度を下げるしか選択肢はありませんが・・・。ダイブブレーキは普段主翼の内部に納められていて、高度を落とす際には内側から板のようなものが出てきて、その空気抵抗によって高度を落とします。R/Wすれすれの高さまで高度を落とすと、機首をゆっくりと上へ向けてフレア(引き起こし)というものをかけます。ジェット機も着陸する際は少し上を向いてますよね。フレアをかけることによってメインギア(主輪)から滑らかに着陸できます。タッチダウン(接地)した後はメインギアにブレーキをかけます。

グライダーは自走不可なので離陸前、着陸後にタキシングなんて格好いいものは行いません。数人で機体を押して移動させます。ただ、風向が変わったときなどにR/Wを長距離移動するときは車でゆっくり牽引します。もちろん翼端の人は歩きですが…。

グライダーを車で牽引する写真
↑牽引中

グライダーの操縦方法

グライダーにはエルロン(補助翼)・エレベータ(昇降舵)・ラダー(方向舵)という三つの舵があり、それぞれ違った働きをしています。エルロンとエレベータは操縦桿で、ラダーは足下のラダーペダルで操舵します。操縦桿といっても自動車のハンドルのようなものではなく、ただの棒で通常右手で操作します。操縦桿の左右でエルロンの操作、操縦桿の前後でエレベータの操作ができます。グライダーからジェット機まで、どんな航空機も基本的にはこの三つの舵で操縦します。

まずはエルロンの説明から。エルロンは主翼後縁の外側半分にある上下する板で、機体を傾かせるために使います。旋回においては操縦桿を右に倒せば右旋回、左に倒せば左旋回です。使ったときの感覚は機体の前後の中心線を軸として、右に倒せば右翼が下がり左翼があがる、左に倒した場合はその逆です。このときの機体の傾きの角度を「バンク」と呼びバンクが深い(急な角度)と狭い半径で旋回し、バンクが浅いとゆっくりと広い半径で旋回します。地上でもエルロンは機体の傾きを調整します。離陸滑走中やタッチダウン(接地)後もエルロンで機体の水平を保ちます。

続いてエレベータです。エレベータは水平尾翼(スタビ)後縁部にある上下する板で、機首の上下をさせるために使います。操縦桿を手前に引くと機首が上がり、向こうに押すと機首が下がります。機首の上下によって速度の調整ができます。機首を上げると速度が遅くなり、機首を下げると速度が速くなります。

そしてラダーです。ラダーは垂直尾翼の後についている左右に動く板で、機首の左右をさせるために使います。船の舵を想像してもらえばわかりやすいでしょう。右のペダルを踏めば右を、左のペダルを踏めば左を向きます。旋回の操作の時にはエルロンと併用します。機体の方向を変えるのも小さな旋回で行うのでラダーのみを使用することはあまりありません。

そして操縦の中でもう一つ大事なものがダイブブレーキです。ダイブブレーキは主翼の中に納められている板で、上空では高度を下げるときに使用します。仕組みとしては主翼から飛び出た板により揚力を小さくして高度を下げるというものです。普通は着陸時にしか使わないので滑空時はしまっておきます。左手で操作し、ロック解除の後レバーを手前に引けば引くほど抵抗が大きくなり高度が落ちます。タッチダウン(接地)後はレバーをいっぱいまで引いてメインギア(主輪)にブレーキをかけます。

ダイブブレーキ使用中の翼の写真
↑ダイブブレーキ使用中

スポーツとしてのグライダー

発航待機列に並ぶ2016年全国大会東大チームの写真
2016年全国大会東大チーム

東大航空部は、関東大会・全国大会・東京六大学戦・全国七大学戦に出場しています。これらの大会は「周回コース速度競技」と呼ばれる方法で行われます。これは出発地から決められた旋回点を経由して、また出発地に戻ってくるまでのタイムを得点に換算して優劣を競うものです。

パイロットはその日の気候条件や地形、雲の様子などから上昇気流の位置を推測し、計器や風の音を頼りにグライダーを巧みに操り、上昇気流をとらえます。競技では強い上昇気流をつかまえ、下降気流を避けて飛ばなければなりません。高度を獲得することでグライダーは、より遠くまで飛ぶことができるようになり、そうしてはじめて1周24~40kmの周回コースを飛行できるのです。また、いつまでも上昇気流の中にとどまっていては、前に進むことができません。どこかで決断して旋回点に向かわなければならず、そのタイミングも重要です。風向や風速、上昇気流・下降気流の強さ、機体の性能、旋回点までのコース取り、他の機体との駆け引きなど、さまざまな要素を総合的に予測・判断する力が求められます。

大会に出場するためには通常はライセンスが必要となります。ライセンスを持っていない人はクルーとして選手をサポートしたり大会の運営を手伝ったりします。

このようにグライダーは、遊覧飛行の楽しみだけでなく、高度な知的ゲームの要素も含んでいるのです。

航空部の1年

航空部の活動は、年10回程度の合宿・週1回のミーティング、そして年数回の大会からなります。グライダーの操縦練習を行う合宿では、雨や強風でない限り毎日フライトを楽しめます。空から四季折々の景色を楽しめるのはとても魅力的です。

新入生を対象に体験搭乗会が行われます。ここでグライダーの楽しさを実感できると思います。そして4月の下旬に初合宿があります。5月下旬には2回目の合宿があります。気象条件が良く上昇気流も多いため、30分を超える長時間フライトが可能で十分な練習ができるでしょう。

6月の短い合宿の後は梅雨とテスト期間のためしばらく合宿は休みです。8月に入るとまた合宿が始まります。夏はたいてい大気が安定しているため操縦練習に最適です。日も長いのでたっぷり練習ができます。本州で最も暑いといわれる熊谷での合宿です。水分補給が重要になります。

9月中旬から下旬にかけて、長い夏休みを締めくくる合宿があります。上達の早い人ならば、この頃にファーストソロに出ることができるかもしれません。11月にも合宿があります。冬が近づくと強い季節風が吹くこともあり、強風の中でのフライトを練習する機会もあるでしょう。

1月と2月にも合宿があります。寒いながらも上昇気流は多くあり、グライダーの醍醐味というべき、上昇気流の探し方やつかまえ方を学ぶことができます。自分で上昇気流をつかまえられるようになれば、グライダーはさらに楽しくなります。2月には全国七大学戦もあり、妻沼とは違った場所でのフライトの機会もあります。最後の合宿は3月です。寒さと強風が和らぎ、飛びやすく感じるでしょう。

そして・・・ひとまわり成長した航空部員となるのです。

合宿風景を撮った写真
↑合宿風景